気孔の観察

 

報告者    阿部 加藤 白石

 

 動機

気孔は光合成に必要な二酸化炭素を空気中から取り込み、酸素を放出する。呼吸はその逆で、酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する。つまり、気孔は植物の行う全てのガス交換に関与している。また、根から水を吸い上げるため水蒸気を放出する。このはたらきを蒸散といい、これには日光で熱せられた葉の温度を下げ、酵素が働きやすい温度にし、光合成の効率を上げる効果もある。夏に木陰が涼しいのはこのためである。

私達は、種類、環境などの違いにより、気孔の形状などに差異が生ずるのではないかと考え今回の観察を行った。

 

 仮説

     種の違いによって気孔の形状や密度に違いがあるのではないか。

     同種でも生育環境によって種の違いと同様に変異が見られるのではないか。

     葉の裏の表皮をはがすことが難しい植物の気孔の観察は困難だが、そのような場合、接着剤を用いて型を取る観察方法が有効なのではないか。

 

観察方法

1,複数の場所から観察する葉を採集する。

2,葉の裏にセメダインを薄く塗り、乾燥させてからはがし、気孔の型を採取する。

3,視野が1平方ミリメートルの顕微鏡を用い、気孔を観察する。

 セメダインとは商品名で瞬間接着剤のことである。また、観察した葉は1カ所につき3枚で、今回の観察では合計90枚の葉を観察した。

 

 観察1 種による違いの観察

  いろいろな種の植物の気孔を観察し、その違いを比較した。

図1

    

   ウツボカズラ 長径0.49mm     ササ 長径0.37mm

       

 

            

 シャコバサボテン 長径0.44mm    アロエ 長径0.44mm

 

        

 ゴムの木 長径0.32mm       ブナ 長径0.21mm   

 図1は、100倍の対物レンズを用いて撮影した気孔の画像である。

 このように、種によって、大きさ、形状に大きな違いが見られた。

 

 図2

                     

 

ウツボカズラ               ササ

                   

       

 

シャコバサボテン             アロエ

 

       

     ゴムの木                マツ

 図2は、10倍の対物レンズを用いて撮影した気孔の画像である。

 シャコバサボテンとアロエは多肉植物であるが、他の植物に比べ、極端に密度が低い。

 ササは、気孔が一直線上に並んでおり、大変規則的な配置になっている。ササと同じ単子葉類であるマツ、イネ、ススキ、スギの葉を調べたところ、どの葉にも気孔が一直線に並んだ様子を観察できた。これは、単子葉類の植物の特徴であると思われる。

 

 

 観察2 環境による違いの観察

 個体ごとの違いを調べるため、今回はヤブツバキを用い、いろいろな場所で採取した葉を比較し、その違いを観察した。

図3

       

 上飯野  長径0.23mm      新庄町  長径0.22mm

 気孔本体の大きさ、形状に大きな違いは見られない。

 

図4

       

採集地 上飯野 平均88個/mm  採集地 新庄町 平均152個/mm

  図4は今回の観察で最も密度が高かったものと低かったものである。環境によって気孔の密度は変化する。

 

表1

 

 

 

 

 

 

 

  表1は葉の採集地と密度のグラフである。

同じ種であっても植えられている場所によって密度に大きな差が生じている。

 

表5

      

新庄町(日陰) 平均103個/mm 新庄町(日なた) 平均153個/mm

 

 図5は同じ個体から採取した日陰の葉と日なたの葉の画像である。

 図から日なたの方が密度が高いといえる。

 

 気孔は葉が生えたときに既に決まった数があり、それが葉の成長につれて分散していくとすると、密度は葉の成長によって低くなると考えられる。

図6は葉の大きさと密度の関係を示すグラフである。


図6

もし、気孔が葉の成長に従い分散するのなら、葉の面積が増えるに従って密度が下がっていく反比例のグラフになるはずである。このグラフでは、そういった規則性が見られない。よって密度の差は葉の成長の違いから生じるものでない。

 

 まとめ

・環境によって、大きさ、形状に大きな違いが生じることはないが、密度には大きな違いが生ずる。

・同じ個体の葉であっても、葉の置かれる環境によって、違いが生ずる。日なたと日陰の葉を比較すると、日なたの葉の方が気孔の密度が高いことがわかったが、これは、日なたの葉の方が多くの日光を受けて、より多く光合成を行うため、日陰の葉より気孔の密度が上がったのだと考えられる。

・今回用いた接着剤で型を取る観察方法は、葉の表面の状態により、一部使うことができない場合もあったが、表皮をはがすことが困難で直接観察することが難しい葉の表面の観察には、有効であることがわかった。

 

 参考文献

 植物の顕微鏡観察   井上勤 監修

 校庭の樹木   岩瀬徹 川名興 共著